バイオ茶の宮崎上水園

創業明治二十九年 バイオ茶の宮崎上水園

STORY 宮崎上水園のお茶づくり 「急がず、休まず、怠らず」

Vol.23

ご縁から生まれた、微粉末茶「颯々」

農薬を使わず、自然の中で自生するように、自家茶園で育てたバイオ茶。茶葉はつやつやとして、力強く、それでいてやわらかい。新芽を摘んで口に含むと香りとうまみが広がって感動を覚えます。この茶葉の栄養を丸ごと届けられたら。そんな思いを叶えたのが、微粉末茶「颯々」です。茶葉そのものをきめ細かなパウダーにしているので栄養すべてを楽しむことができるのです。誕生のきっかけとなったのは、思いがけないご縁からでした。

1994年10月、母・ソナが他界し、12月に、兄・信一が亡くなりました。立て続けに家族を失って気落ちしているとき、鹿児島の知人、食事処「愛の里」の福永正明さんが海を見に連れ出してくれました。訪れた串間で立ち寄ったのが、宮崎銘木工芸事業協同組合。屋久杉の原木を仕入れて、加工販売しています。引き寄せられるように、小さな座卓に惹かれ、わずかながら母が残してくれたお金で買い求め、仏間に置くこととなりました。

その後、親しくなった宮崎銘木の青野社長から紹介いただいたのが、さまざまな原料を粉末にする、静岡県のメーカーです。緑色野菜を粉末にした青汁をはじめ、サメの軟骨やひまわりの花など、扱うのはありとあらゆるもの。

通常、摩擦によって粉末にしますが、摩擦による熱がお茶を変質してしまうことを懸念していました。ところが、こちらで開発した機械は摩擦ではなく、物体同士をぶつけることによって粉末にすると言うのです。さらに驚いたことに、水分が30%以上あるものでも粉末にすることができる。機械の販売はせず、ただ加工に使用しているというので、早速依頼してつくってもらうことにしました。

工場の方曰く、何度となくお茶を粉末にしてきたが、バイオ茶は比重が重く、ほかのものとは全く違うとのことでした。それだけ茶葉がしっかりとたくましく育っているということかもしれません。

摩擦熱を加えず、粉末化した、バイオ茶。お茶を淹れて飲むのとはまた違う、フレッシュな味わいに感激しました。水やお湯、ミルクで溶かしてドリンクとして、また、料理やパン、お菓子づくりにも使えます。

2020年には、米国のハリウッドの映画の祭典、アカデミー賞授賞式後の公式パーティーにて、水出し茶がドリンクとして、「颯々」はデザートとなって振舞われました。サスティナブルなお茶づくり、また、料理の味を引き立てるおいしさがシェフに選ばれた理由でした。ご縁から生まれた「颯々」から、お茶の可能性が広がって感無量です。


微粉末茶「颯々」
バイオ茶の茶葉をきめ細かなパウダーにした、微粉末茶「颯々」
微粉末茶「颯々」
水に溶かしてドリンクに。茶殻が出ないので環境にもうれしい
微粉末茶「颯々」
抹茶のように点てて味わっても