バイオ茶の宮崎上水園

創業明治二十九年 バイオ茶の宮崎上水園

STORY 宮崎上水園のお茶づくり 「急がず、休まず、怠らず」

Vol.07

自然の中で自生するような、お茶づくり

「自生する本来の茶のように、渋みのないお茶をつくる」。
物理学者・原隆一先生と出会い、決意を新たに、ゼロからお茶づくりと向き合う日々がはじまりました。「立春」から数えて88日目が「八十八夜」。ちょうどゴールデンウィークのころ、茶摘みシーズンを迎えます。冬に蓄えられたエネルギーが、新芽として生まれ出る。「新茶」「一番茶」は、最もお茶の風味良く、栄養成分がバランス良く含まれているといいます。

現代では、嗜好品として親しまれるようになり、味や香りが追求されて楽しみ方も広がりましたが、日本に伝来した昔、お茶は「良薬」として珍重されていました。原先生と話す中、原点に立ち返り、良薬とされたお茶本来の力を引き出したい、そんな思いに駆られました。

「2月になると、茶樹の中の水が動き出す」と、原先生は言います。二十四節気でいえば、2月は「立春」から「雨水」。春の兆しから、芽吹きへ、地が潤って目覚めるころ。茶樹にとってはまだ気温が低く、湿度も低いため、茶樹全体の水の動きは少なく、発芽には至りませんが、梅の花は咲く。これは「遺伝子の違いによるもの」と原先生は言うのです。

梅の花が散り、桜の花が咲く頃、ようやく茶の発芽が見てとれるようになる。
茶摘みが始まる季節になると、温州みかんの花が咲き、初夏の訪れとなる……
こういった現象はみんな、太陽の光によって起こる、自然界の仕組み。

家業を引き継いだころ、若干の疑問を持ちながらも、より美味しいお茶を作りたいばかりに肥料を増やし、比例するように農薬を散布する回数も増えていました。原先生から「お茶が渋い。こんなに肥料を詰め込んだら加工も大変だろう」と指摘を受け、教えを受けるうち、ようやく気づいたのです。自然界に自生する植物は、肥料も農薬も与えられずとも、季節になるとちゃんと芽を出し、花を咲かせるということに。

加工だけでは、どうやっても渋みが抜けず、化学肥料が原因ではないかと、試験的に茶園の一部でやめました。おかげで、肥料が味に起因していたことがわかりました。けれど、取りやめたことで、当初は害虫にやられ、収穫ができない茶園もあったほどでした。しかし、気づいてしまった以上、後には引けません。

現在は、農薬を全く使わず、有機肥料を中心に、微量元素ミネラルを利用し、栽培する方法を確立。微量元素ミネラルは、私たちの身体を守るためにも必要なミネラルです。土はほくほくとやわらかく豊か、病気や害虫も最低限に抑えられています。すこやかな自然環境の中で自生する力を引き出した、今につづく、上水園のお茶づくりの始まりでした。



原先生の教えで自然のサイクルに気づく。いまでは自家茶園は虫や草花も息づくすこやかな環境。